日本軍は日本を滅ぼした

2019.8.  星屑

 

筆者はどんなことがあっても戦争だけはしてはいけないと固く思っています。

しかし、若い方がた(筆者70代よりも若い方がた、という意味です)の中に、「攻められるかもしれないから軍隊は必要だ」、「主権国家として軍隊は必要だ」という意見の方が結構おられるようです。何も過去を知らない方々が、そう思うのは理解できないことではありません。でも、日本に特有な歴史があり、過去の歴史を無視して単純に「軍隊が必要だ」というわけにはいかないと筆者は思っています。「自衛隊を憲法に書いたっていいじゃないか」と思っておられる方々に、どう言ったら耳を傾向けていただけるのかがよく分かりません。いろいろな言い方(書き方)をして、すこしでも聞いて(読んで)いただければと思います。

 

1.過去の日本軍は日本を滅ぼした

 そんなはずはないだろう、と思われると思いますが、これは真実です。1930年前後から、そのころの日本軍 (陸軍と海軍)は、天皇からの命令で行動すると言う憲法の規定を無視して、かつ、天皇に嘘を報告したり脅迫したりして、軍が自分で勝手に行動するようになりました。陸軍幹部(東条英機)が首相にもなって、政治の中枢を乗っ取ってしまいました。1941年12月には勝つ見込みのないことを知っていながら米国(ハワイ真珠湾)攻撃によって太平洋戦争を開始しました。奇襲攻撃、夜間攻撃と言う卑怯な戦法によって最初の数か月は勝利を続けましたが、半年後のミッドウェー海戦以降は殆どすべて敗戦。負けが明白になった後も多くの犠牲者を出しながら1945年8月まで悲惨な戦争を続けました。日本軍が日本を滅ぼしたのです。

2.旧日本軍は国民を守る義務はなかった

 これも、そんなことはないだろう、と思われるでしょう。でも、そうだったのです。満州では何十万人という日本人を置き去りにして、軍隊(関東軍)だけ先に逃げてしまったのです。沖縄では、住んでいた日本人を守るどころか、中学生、高校生そして女学生までをも戦争に駆り立てて死に追いやったのです。洞窟に逃げ込んだ軍は、住民たちを出口付近に配置して生きた盾として使ったとも言われています。(助かったひとの本音は「米軍が日本軍から助けてくれた」だったという資料もあります。)

 米軍も、中国軍も、ほとんどの国の軍隊は、市民運動〈革命運動や独立運動)で発生した軍なので、基本的に市民を守ることが第一の目的です。でも、旧日本軍は「天皇の軍隊」として作られた軍です。天皇を守ることが使命であり、国民を守ることは使命ではありませんでした。したがって、国民を守らなかったために罰せられた軍人はいません。

 なによりも忘れてはいけないことは、「戦争はひとを狂気にする」という事実です。

3.反省をしていない

 1945年8月15日に日本は連合軍に無条件降伏し、敗戦しました。そして、その後80年近くたった今まで、戦争の反省、総括をしていません。現在の政治の中央にいる人々の中には敗戦すらも認めようとしない人たちがいます。「敗戦記念日」とは言わず、「終戦記念日」と言っているのは、おかしなことだと思います。そして、近年いくつかの報道で、自衛隊の中では昔の日本軍と同じ教育、言動が繰り返されているらしいことが分かってきました。いま、「軍」を作ったら、旧日本軍に非常に近い軍が出来るだろうと思います。それでいいですか?

 

筆者の考えを要約すると上の3点かと思います。みなさんはどう思われますか?

以下に、もうすこし、補足を書いてみます。

 

4.勝てない軍では意味がない

 「軍が必要だ」、「自衛隊を憲法に書いたっていいじゃないか」と思っておられる方々は、軍を持てば、あるいは自衛隊を憲法に書けば、「戦争に勝てる」、「攻めて来る敵をやっつけて日本を守れる」、「自衛隊あるいは日本軍が自分を守ってくれる」と思っておられるに違いないと思いますがいかがですか。でも、どうして勝てると思うのですか?どうして日本軍が自分を守ってくれると思うのですか?根拠は明確ですか?

 筆者は残念ながら、勝てないと思います。小競り合いには耐えるかもしれませんが、半年以上かかる戦争には勝てないと思います。その理由は、1945年までの敗戦の原因を調べて対策をとることをしていないからです。現代は昔より早く物事が進みますから、半年ももたないでしょう。また、人工衛星による査察など敵発見の技術も進んでいますから、奇襲攻撃や夜間攻撃はなんの役にも立たないでしょう。さらに現代の戦争への対処も非常に遅れているからです。1945年までの戦争に巨大戦艦〈大和、武蔵)が無力、役立たずだったのと同じように、この次の戦争には、戦闘機や空母も無駄な装備だと思います。2019年9月には、サウジアラビアの石油基地がドローンで爆撃されました。戦闘機も空母も必要ないのです。サイバー関係も非常に遅れているに違いないと思います。

 そして、上記2.に書いたように、昔の日本軍の伝統を受け継いだ自衛隊、あるいは日本の軍隊が「国を守る」と言うときの「国」の中にあなたは含まれていないと考えたほうが妥当だと思います。われわれ庶民を守るつもりはないのです。彼らの言葉の「国」とは、天皇や国会議員、官僚のことであり、庶民は考慮されていません。「国民」とは、「中枢部の人々」のことであり、より広い定義でも「政権を支持する人たちだけ」を意味してるのだと思います。自衛隊や軍は「国を守る」とは言ってますが、あなたを守るとは決まっていません。(*)

 軍隊、自衛隊、そして軍備の話をする前に1945年までの戦争の総まとめ、反省をすべきだと強く思っています。

 そして、一番重要な点を先に書いてしまいますが、もしも日本が次に戦争を始めたら、戦争に巻き込まれたら、世界地図から日本は消滅するだろうとも思っています。1945年の敗戦に懲りずに、またも世界を乱すような国は消さなければいけないと世界の大多数が考えるでしょう。いくら軍備を充実させても、日本がそれを使ったら日本が消滅する可能性が高いのです。

5.1945年までの戦争のまとめ、反省なしでは先に進めない

 自衛隊の軍備を現在以上に増強したり、自衛隊を憲法に書き込んだり、「軍隊」として認めるようなことをする前に、過去の日本軍のどこが悪かったのかを箇条書きに明文化し、それぞれの項目についてどのような対策をとるのかを明らかにしておくことが絶対に必要です。それなしに進めることは危険です。外国の軍隊よりも、自国の、日本の軍隊の方がずっと怖いのです。1945年に日本を大敗戦に導いた実績があるからです。

 

一番大事なことは、みなさんがご自分で考えることです。筆者は、このようにいろいろ書いていますが、それにつられてはいけません。筆者はすでに70代、これからの世界がどうなろうとも、自分にはあまり影響はありません。これからの世界は、年寄ではなく、みなさんが作っていくべきものです。でも、これからのみなさんが1930年頃から1945までのようなつらい目に会うようなことがあってはいけないと強く思っています。1945年に戦争が終わった後も、つらい時期が長く続きました。戦場に出た人たちだけではありません。悲惨さはむしろ戦場から遠く離れた家族の皆さんの方が大きく、長く続きました。そして、近隣の諸国に被害を与えてしまったと言う点の苦悩は、80年近くたった今でも大きく筆者の心にのしかかっています。自分たちの世代がやったわけではないのですが。被害を受けた側から考えたら、何世代経とうとも忘れることはできないと思います。(1945年までの戦争の最も大きな被害は、何世代経っても消せない「負い目」を日本の皆さんに残した点だと思います。安倍首相が何と言おうとも、この負い目は永久に消えないでしょう。罪もないのに突然日本軍に村ごと殺された人たちの身になって考えれば分かることです。日本軍はとてつもない負の遺産をわれわれに残したのです。(**))

みなさんのご自分の将来、お子様たちの時代をどのようにしたいか、ぜひ考えてください。

 

このメモはこれからも追加を書きますが、なるべく早くみなさんに考えていただきたいので、ここまでで、ホームページに載せることにします。

 

(*)1945年の悲惨な大敗戦にいたる戦争を開始し、推進した内閣(半分以上は軍の上層部)や上級官僚、国会議員やその家族には、戦争の被害は殆ど及んでいません。権力や地位を使って徴兵を逃れ、軍に入っても危険な前線には行かなかったのです。敗戦時に国会を開くにあたって欠員の問題など全くなかったのが、大きな証拠です。自分には被害が及ばないひとたちが戦争を煽っていたのです。現在も同じ状況だと思いませんか。

(**)「いつまでも謝り続けることはできない」などと言うことは、将来にわたって日本の負い目を増やすことにほかなりません。日本人は反省しない、懲りない国民だ、自分で言っているわけですから。原爆や東京大空襲の恨みを日本人は忘れたのに、などと言う人もいるようですが、それを中国、韓国に当てはめるのは間違っています。日本はもともと対中国、対米の戦争を始めた当事者ですし、中国や韓国には言い表せないほどの大きな被害を与えました。(日本の死者310万人に対して、中国では1000万人をはるかに超える [2000万人という資料もある] 死者。戦争被害は死者数だけでは表わせませんが、近隣諸国に与えた被害の大きさを想像してください。)それを考えると、日本が大きな被害をうけてもやむを得ません。でも、中国や韓国は、日本に戦争を仕掛けたり、日本本土に危害を与えたことはないのに、一方的に大きな被害を受けたのです。

(追加)「日本軍は国民を守る使命はなかった」ということに関する追加です。1945年までの戦争の末期には本土、それも東京での地上戦が想定されていました。関東の陸軍の大部分は東京中心から数10kmの駐屯地にいて、地上戦となったら大軍が皇居付近に集合することになります。でも、その時には、道路は避難するひとびとで一杯のはずです。「どうするのだ」と聞いたひとに大本営(陸軍・海軍の総司令部)の幹部は、「軍の行動に邪魔になるやつらはすべて殺す」と言っていたそうです。筆者の身近な人から直接聞いた話です。